皆さんはカーペット椅子がどんな素材で仕上がっているか気にしたことはありますか?

化学繊維、天然繊維、本革、合皮…
様々な種類がありますが中には水に弱かったりと、
クリーニングの選択の幅が狭くなることがあります。

特に高価なモノは希少な素材で構築されていることが多く、
クリーニングを行うにはリスクが伴うケースが多いです。
しかし、それらも日常的に使用されるものである以上汚れは蓄積されていき、
衛生上の問題からもクリーニングを行わないわけにはいきません。


我々は長い間ウェットクリーニングを生業としてきており、
お客様からウェットクリーニングが可能かどうかのご質問が寄せられることも珍しくありません。

基本的な知識を要しているだけで専門業者でなくとも、
水洗いが可能か否かの判断が可能なケースもあります。

当記事では簡易的ではありますが、
素材に関する知識と見極め方を少しでも共有できればと思います。

化学繊維と天然繊維

あらためて、我々は布張り製品のクリーニングに特化した業者であります。
しかし布張りとはいうもののそれが編まれている繊維は様々な種類があり、
大きなくくりとしては「化学繊維」「天然繊維」に分けられます。

化学繊維とは人の手によって作り出された繊維であり、
代表的な例として挙げられるものは、

・ナイロン
・ポリエステル
・ポリプロピレン

といったものたちです。
カーペットや椅子だけでなく、洋服など布全般に広く使われている有名なものですね。


化学繊維は幾つか例外もありますが、基本的に以下のような長所が挙げられます。

・低コストにより大量生産が可能。
・耐久性に優れ、虫やカビの発生も防ぐことができる。
・水に強く、ウェット手法によるクリーニングが可能。

高品質でありながら、低コストを再現している化学繊維は
様々なオフィスカーペット、チェアに使用されており、
ウェットクリーニングにも最適な素材といえるでしょう。

しかし、以下のような短所も挙げられます。

・天然繊維と比べると様々な機能面で劣ってしまう。
・火に弱く火災の原因になりかねない。

後述する天然繊維には機能性では劣ってしまう欠点はありますが、
それも凌駕する魅力的な長所が多く、オフィスを彩る重要な役割を担っていますね。

天然繊維とは天然の植物、動物などから採取された繊維であり、
代表的な例として挙げられるものは、

・ウール
・絹
・綿

こちらも服飾など、幅広く使われているものたちですね。


天然繊維は以下のような長所が挙げられます。

・化学繊維に比べ、保温性、染色性…様々な機能面で優勢である。

天然繊維は種類によって特徴も大きく変わりますが、
カーペットで主流なウールを例とした場合、
保温性、吸湿性、撥水性、の高さにより、
夏は涼しく、冬は暖かな環境と汚れにくさを再現しています。

しかし、以下のような短所も挙げられます。

・貴重性の高さ故の高コスト化
・化学繊維に比べカビの発生率が高い
・水に弱く、ウェット手法によるクリーニングにリスクが伴う。

動物の体毛を始めとした天然素材は、
ウールを例とすれば羊の毛の採取が年に1度のみと、
生産が期間限定であったり、数量に限りがあり、
供給が少ないことから高コストとなってしまうのは必然です。

また、天然繊維の多くは水に濡れると縮んでしまったり、色落ちしてしまったりと
ウェットクリーニングには不向きな要素が多く存在します。

長所に比べ、短所が多いような印象がありがちですが、
天然素材から作られる高級感溢れたカーペット等は
一空間を彩る役目を果たしているともいえるのではないでしょうか。

本革と合皮

椅子の素材で使用されることの多い革ですが、
本革合皮に分けられます。

本物の動物の皮を素材とする本革は前述した天然繊維と同じく
吸湿性、保湿性、耐熱性、遮熱性…
様々な利点があると同時に
水に弱い、汚れが付着しやすい、高コストといった欠点も存在します。

本革に寄せて人工的に作られた合皮は
限りなく見た目を本革に似せたモノを安価に入手でき、
水にも強く、本革よりも軽いといった利点があります。

しかし、本革に比べると寿命が早かったり、
劣化してくると表面が剥げてきたりと見栄えが悪くなる
といった欠点もあります。

天然と人工の見分け方

繊維、革の大まかな種類を説明しましたが、総合すると、
人工的に作られたものは水に強くウェットクリーニングが可能。
天然素材で作られたものは水に弱く、ウェットクリーニングには不向き
ということになります。


しかし、長くクリーニングに携わってきた我々でも
素材を一目見ただけで天然物と人工物の違いを見分けることはなかなかに難しいです。
商品の取扱説明書やタグなどに記載があれば看破することは容易いでしょうが、
どちらも存在しない状況も珍しくはありません。

そんな時に簡易的に行える繊維の見分け方は燃焼実験です。
対象の一端から糸状に繊維を切り取り、燃やして
燃え方、臭い、煙の色などをもって見分けるという方法です。

専門的な知識がなくとも分かりやすい見た目の違いは、
天然繊維は熱に強く火をつけてもなかなか燃えにくいという特徴に対し、
化学繊維は非常に燃えやすく、少量の繊維であれど激しく燃え上がるという特徴があります。

また、天然繊維のなかでも動物性のものは燃やした時に
髪の毛を燃やした時のようなタンパク質の燃える悪臭
がします。


本革と合皮の見極め方は
革の表面に毛穴があるか否かを見ることとで判断できることがあります。
本革はもともと動物の皮膚であり、加工方法によっては見にくくなっている場合もありますが、
よくみると毛穴を確認できることもあります。

また、長期使用された対象であれば、革のすれた部分を確認すると、
本革であれば色が落ち、染色前の色が見受けられ、
合皮の場合はひび割れ、剥がれ落ち、下の布地が見える
ことがあります。

簡易的ではありますが、
以上がオフィスカーペット、チェアの基本的な素材である
繊維と革についてのうんちくとその見極め方になります。

実際には椅子は本革のモノを目にする機会も少なくはないですが、
カーペットに関しては我々が目にするもののほとんどが化学繊維によるものです。
しかし、稀にお客様からの依頼で珍しい見た目の製品のクリーニング依頼を受ける時もあります。
その時に理論的に説明できる手段を持つことと、
安易に受諾し、後々のトラブルを回避するために当記事のような知識を得ておくことは大事かもしれませんね。